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に、計測された微係数を井上式で除して、前述のフレームライン形状を表すパラメータσaで整理して見ると、これらはいずれもσaの影響を簡単な1次式で表現でき、次の微係数推定式を得た。

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この式による近似結果を図3.6.2に示すが、相当な改善が見られ、フレームライン形状を考慮することの重要性が明らかとなった。
(b)主要目とσaに対するより一般的な回帰式
井上式の理論的背景を考慮して、井上式の主要目を表すパラメータとσaを種々に組み合わせ、式の簡略さも考慮しながらより推定精度の高い回帰式を選びだし、次の推定式を得た。

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この推定式による推定の程度を図3.6.3に示すが、井上式にフレームライン形状の影響を修正する一次式を組み合わせた(3.6.2)式に比べ、近似の程度は更に改善されている。
以上述べた2種類の推定式いずれも、船尾のフレームライン形状の操縦流体力に及ぼす影響をパラメータσaで表現すると、簡単な式の割には精度よく、線形微係数の推定ができることがわかった。今後、データを蓄積して、この方向で推定式の改善を行うことが課題となろう。現在の時点ではデータも限られているから、推定精度の多少の良否から優劣を判断するのは尚早で、実績のある丼上式で主要目の影響を考慮して、これにフレームライン影響をσaの一次式で簡単に取り入れるという(3.6.2)式が目下の段階では実用的と思われる。
(4)改良推定式による操縦性能の推定
ここでは船体に作用する流体力の線形項に限定して検討をしてきたから、この結果から操縦性能全般の推定は困難であるが、比較的小さな操縦運動の範囲であれば、この流体力推定法の改善が操縦性能推定にどの程度効果があるかを判断できる。本研究の当初、船体に作用する流体力は主要目のみの関数として(3.6.1)式で推定してきたから、図4.1に示すように針路安定性の程度が大幅に異なるA、B、Cの3船型の操縦性能はほとんど同じに推定されていた。ここで、線形微係数に改良された(3.6.2)式を用いた結果を図4.2に示す。船尾フレームライン形状の違いによる針路安定性の変化がループ幅の形で巧く推定でき、本研究の成果として、初期設計の段階で実用船型の針路安定性を推定することが可能になったと結論できる。
今後、この成果を操縦性能全般の推定に活用するには船体流体力の非線形項や干渉流体力についてもデータベースの解析を行い、推定法を確立することが必要になる。また、ここで示した方法は幅広い範囲の船型の流体力特性をわずかなパラメータで推定するという考え方であるが、船型を幾つかのタイプ

 

 

 

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